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「調理場という戦場」(斉須政雄) レビュー
東京三田にあるフランス料理のレストラン「コート・ドール」のシェフが、料理人としての苦労話や自らの考えを記したものです。本書を読むきっかけは、以前、宮大工の西岡常一氏の「木に学べ―法隆寺・薬師寺の美」を読んだときに、職人のプロ意識の奥の深さに感銘を受け、他の分野の職人の考えにも触れてみたいと思ったからでした。私は、自分では全く料理をしません。だからこそ、料理を極めた人の著作からは何か新たな知見が得られるのでは、と考えたのでした。

以下、本書で印象に残っていること:
・料理人の世界の厳しさがよく描かれていた。単身でフランスに渡って修行を積んでいた頃の生活環境の厳しさ、戦場と例えられる仕事量の多さと精神的なプレッシャーなど。
・店を変えながら経験を積み、実力と信頼を向上させていく過程は、一般のビジネスマン(人事異動・転職など)にも通じるものがあると思いました。
・3店目の「ヴィヴァロワ」で、オーナーに心酔し「こういう人になりたい」と思った場面が印象的。オーナーの、無欲で自然体で、掃除を徹底して行なうところがいかに素晴らしいか。
・4店目の「タイユバン」は、同じパリのミシュランの三つ星レストランでも、ヴィヴァロワとは全く対照的なのが面白い。ヴィヴァロワは自由度が高く一人で多くの作業ができたが、タイユバンでは、作業が細分化・分業が厳格に守られ、一人の人に全てを分からせない、情報を盗まれない仕組みになっていることに驚いた。
・著者が同僚に腹をたてて手を出してしまう(しかもほとんど反省も後悔もしていない)シーンがいくつか出てきたのにはびっくり。
・「一般的な料理のマニュアルに従った作り方から言えば、ちょっと足りないことやちょっと出すぎたようなことを、時と場合によって、素材の様子によって使い分ける。そういった微調整ができることが、料理人の能力の重要な部分だとぼくは思う。」・・・どの世界にも当てはまりそうですね。
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|ノンフィクション一般 | comments(0) | trackbacks(0) |
「ブルー・オーシャン戦略」(W・チャン・キム, レネ・モボルニュ)レビュー
評価:
W・チャン・キム,レネ・モボルニュ
ランダムハウス講談社
¥ 1,995
(2005-06-21)
ブルー・オーシャン戦略は、私の周囲でも流行り言葉のように使われています。一言で言えば、競争のない市場を開拓し、新たな需要を創造し、従来の競争を無意味にする。その際、技術革新は伴わず、コストを抑えながら、顧客にとっての価値を高める。ということでしょうか。本書は、ブルーオーシャン戦略のバイブルとされており、一読の価値ありです。特に、初めに競争市場ありき、という観点でマーケティングを考えてきた人には、得るものが多いでしょう。多数の事例が紹介されていて分かりやすいです。本書では書かれてませんでしたが、任天堂のDSやWiiもブルーオーシャンと言えるでしょう。

ただ、疑問に思うこともあります。本書では、過去の多くのブルーオーシャン戦略の事例を取り上げていますが、それらは「『ブルーオーシャン戦略』という方法を採用しよう」という計画のもと実行され、成功したのではないはずです。単に本書が、過去の成功事例だけを都合よく集めて、それらに共通する部分を帰納的に「ブルーオーシャン戦略」と呼んでいるに過ぎないのではないでしょうか。つまり、ブルーオーシャン戦略の中のどのツール・プロセスを適用すればどれくらいの確率で成功する、といった演繹的な意味での保証はできないのではと思うのです。この点について、本書では明確は説明がありません。他の文献に何か書いてあるのでしょうか。識者にご教示いただきたいです。
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【以下、読書メモ/要約】
○ツール:
・戦略キャンバス(価値曲線)
・新しい価値曲線を描くために、要素を「付け加える」「増やす」「取り除く」「減らす」ことを検討する。(4つのアクション→アクションマトリクス)
・価値曲線には、(1)メリハリ、(2)高い独自性、(3)訴求力のあるキャッチフレーズ、の3つが必要。
例:シルク・ドゥ・ソレイユ、イエロー・テイル(ワイン)

○ブルーオーシャンを創造する6つのパス:
1) 代替産業に学ぶ(機能・形状が異なるが同じ目的のもの。例:ネットジェッツ、NTTドコモ・iモード。)
2) 業界内の他の戦略グループから学ぶ。(顧客が別のグループを選ぶ際の決め手は? 例:フィットネスクラブのカーブス)
3) 買い手グループに目を向ける。(購買者と、利用者・意思決定者は別かも。例:ノボ社のインスリン)
4) 補完財や補完サービスを見渡す。(使用中・前後のネック解消を。例:映画館のベビーシッター。ハンガリーのバスNABI社)
5) 機能志向と感性志向を切り替える。(感性志向の事業は簡略化、機能志向はその逆を。例:QBハウス)
6) 将来を見渡す。(後戻りしないトレンドを予測。例:アップル iPod/iTunes、CNNニュース、シスコのルータ)

○戦略キャンバスを描くプロセス:
1. 現在の戦略キャンバスを図示、他社と比較。
2. 現場を見て、現状を把握。
3. 価値曲線を描く。既存顧客・他社顧客・潜在顧客に説明し、フィードバックを得る。
4. PMSマップでビジュアル化(パイオニア/移行者/安住者、の現状と今後)。

○新たな需要を掘り起こす(非顧客層に目を向ける)。
1) より良い選択肢を求める層:他業界に去った顧客の共通点は?
2) 敢えて利用しない層:利用しない理由は?
3) 未開拓層

○戦略を考える正しい順序:
1. 買い手にとっての効用 → 2. 価格 → 3. コスト → 4. 実現への手立て。
・効用を生み出すには:
顧客経験の6ステージ(購入、納品、使用、併用、保守管理、廃棄)において、顧客の生産性、シンプルさ、利便性、リスク、楽しさや好ましいイメージ、環境への優しさ、の観点で新たな効用を検討する。
・価格:
step1. 顧客の密集する価格帯を見極める(同形態、異形態同機能、異機能同目的、の製品・サービスの価格を調査)
step2. 顧客の密集する価格帯の範囲内で価格を決める。(法規制・特許があれば高め、模倣しやすい場合低めに)
・コスト:価格を実現するため、合理化、コスト革新、提携などの手段をとる。
・導入:導入の障壁に対応(従業員、事業パートナー、消費者の抵抗を無くす)。

○その他
・組織面のハードル:影響力の大きい要因に集中する(ティッピングポイント・リーダーシップ)。例:ニューヨーク市警ブラットン本部長。
・社内の協力を得るには、公正なプロセスによる戦略策定が必要(3E:関与、説明、明快な期待内容)
・ブルーオーシャンは模倣が難しい。(従来の理論に染まった人には理解されない。ブランドイメージを損なう。共倒れになる。特許・法規制。社内の文化。顧客の支持。などの問題)
・ブルーオーシャンは、既存企業・新興企業の両方で可能。既存企業の場合、中核事業であることが多い。
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|経営論・組織論・財務 | comments(1) | trackbacks(1) |
「十角館の殺人」(綾辻行人)レビュー
大学のミステリ研究会の学生が大勢出てきて、互いに妙なニックネームで呼び合いながら、子供じみた会話をしているという状況が多かったため、中盤あたりまではあまり面白いと思いませんでした。というか、島にいるメンバーの中で誰が一番怪しいか、という点については、途中からほぼ読めていました。あとはもう、終盤に驚きのどんでん返しがあるということだけが楽しみでした。そして、あの衝撃の一行が待っていました。全く予期せぬタイミングだったため、意表をつかれました。鮮やかでした。

しかし、この小説は、つまるところ、あの一行で読者を驚かせるためだけに、全ての人物が配置され、全てのストーリーが準備され、そしてあの一行の後は単なる後始末の説明をしただけなのでは、とも思いました。あれだけの長さの小説なのだから、さらに一波乱あったらよかったのに・・・。
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|綾辻行人 | comments(0) | trackbacks(0) |