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「調理場という戦場」(斉須政雄) レビュー
東京三田にあるフランス料理のレストラン「コート・ドール」のシェフが、料理人としての苦労話や自らの考えを記したものです。本書を読むきっかけは、以前、宮大工の西岡常一氏の「木に学べ―法隆寺・薬師寺の美」を読んだときに、職人のプロ意識の奥の深さに感銘を受け、他の分野の職人の考えにも触れてみたいと思ったからでした。私は、自分では全く料理をしません。だからこそ、料理を極めた人の著作からは何か新たな知見が得られるのでは、と考えたのでした。

以下、本書で印象に残っていること:
・料理人の世界の厳しさがよく描かれていた。単身でフランスに渡って修行を積んでいた頃の生活環境の厳しさ、戦場と例えられる仕事量の多さと精神的なプレッシャーなど。
・店を変えながら経験を積み、実力と信頼を向上させていく過程は、一般のビジネスマン(人事異動・転職など)にも通じるものがあると思いました。
・3店目の「ヴィヴァロワ」で、オーナーに心酔し「こういう人になりたい」と思った場面が印象的。オーナーの、無欲で自然体で、掃除を徹底して行なうところがいかに素晴らしいか。
・4店目の「タイユバン」は、同じパリのミシュランの三つ星レストランでも、ヴィヴァロワとは全く対照的なのが面白い。ヴィヴァロワは自由度が高く一人で多くの作業ができたが、タイユバンでは、作業が細分化・分業が厳格に守られ、一人の人に全てを分からせない、情報を盗まれない仕組みになっていることに驚いた。
・著者が同僚に腹をたてて手を出してしまう(しかもほとんど反省も後悔もしていない)シーンがいくつか出てきたのにはびっくり。
・「一般的な料理のマニュアルに従った作り方から言えば、ちょっと足りないことやちょっと出すぎたようなことを、時と場合によって、素材の様子によって使い分ける。そういった微調整ができることが、料理人の能力の重要な部分だとぼくは思う。」・・・どの世界にも当てはまりそうですね。
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「不都合な真実」(アル・ゴア)レビュー
評価:
アル・ゴア
ランダムハウス講談社
¥ 2,940
(2007-01-06)
Amazonランキング: 848位
政治家が本を書く場合、どんな内容であれ、それは政治活動の一環だと思います。環境問題という、万人受けするテーマなのだから、なおさらでしょう。本書で一番いいたいことは、最後のほうに集約されているようですね。京都議定書への批准の問題、アメリカの地球温暖化への寄与率の高さなど、やはり、ブッシュ政権の政策、今のアメリカ社会の現状への批判、そしてその対極として自らのポジションを印象付けることが狙いなのだと思います。もし、本気で地球温暖化を阻止したいのなら「燃費のいい車に乗ろう」なんて自動車産業の顔色を伺うような書き方をしないで「自動車には乗るな、買うな」くらい言ってほしいし(アメリカ人には無理?)、自動車の温暖化への寄与率などもっと具体的なデータも示してほしい。万人受けすることではなく、多くの人(共和党以外にも)を敵に回すくらいのことを書いてほしいです。

ただ、そうした部分を割り引いたとしても、本書のコンテンツは非常に充実度が高いです。それは評価したいです。同タイトルのドキュメンタリー映画(まだ観てません)のコンテンツの抜粋のようですが、掲載されている写真や図表がどれも実に説得力があります。写真集としても十分価値があると言えるほどです。私が好きなのは、全世界の夜の衛星写真を合成したものです。アメリカ東海岸、西ヨーロッパ、日本の3地域は、夜中でも明るくなっているのが印象的でした。

全体的に、構成がごちゃごちゃしていて読みにくいところもありますが、それでもこれほど読者の興味を喚起するような形でデータ・写真・図表を多用し、分かりやすく、地球環境問題を採り上げた書籍は他にないのではないでしょうか。その意味でも一読の価値はあると思います。
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「天に昇った命、地に舞い降りた命 ― 「9・11テロ」で逝った夫へ、残された子供達へ」(杉山晴美)レビュー
9・11テロ

天に昇った命、地に舞い降りた命

(杉山晴美) マガジンハウス ¥1,365

★★★★★ 

2001年9月11日に発生した「同時多発テロ」で銀行員の夫を亡くした妻である筆者の手記です。テロの3年後に放送されたフジテレビのドラマ「9・11」の原作です。ドラマを見た後読みました。ドラマでは、和久井映見の迫真の演技やBGM・映像などの演出効果もあったせいか、涙腺が緩みそうになりました。ぜひDVD化してほしいと思うほどでした。

一方で、本書を読んだときは、事前にドラマで内容を知っていたせいか、冷静に読めました。何よりも筆者の前向きな姿勢に圧倒されました。書き残そうとする意志、困難に立ち向かおうとする意志、子供をしっかり育てようする意志に感心させられます。父親の死を長男に告げることを決心し、空を見ながら、お父さんは星になったと説明する場面が最も印象に残っています。海外で事件・事故に巻き込まれた場合の、現実的な問題への対処の方法についても勉強になります。
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「夜と霧」(ヴィクトール・E・フランクル)レビュー
夜と霧

夜と霧

(ヴィクトール・E・フランクル)みすず書房 ¥1,575

★★★★☆ 

二つの動機から本書を手に取りました。第一に、ユダヤ人の歴史・アウシュヴィッツの強制収容所についての関心が強かったこと。第二に、被収容者だった作者が心理学者としてどのような説明をするのか興味があったということです。これらの両面で、非常に読み応えのある作品でした。

また本書で最も印象深かったのは、人間の内面の多様性や奥の深さに触れている部分です。どんなに苦しい状況でも、そこで生きることに意味があり、希望や尊厳を失わないことが可能なこと、未来に希望を持つことがいかに重要かなど、多くのことを認識させられました。池田香代子の訳も、多少読みにくいところはありますが、格調が高くて悪くないと思います。
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「セックスボランティア」(河合香織)レビュー
セックスボランティア

セックスボランティア

(河合香織)新潮社 ¥1,575

★★★★★ 

最初は興味本位で手にとってみたのですが、予想以上に深層に踏み込んだ内容だったので、真剣に考えながら読ませてもらいました。障害者の性については、漠然と考えたことはあったものの、例えば手が動かない人は自分で自慰行為ができないなど、考えてみれば当たり前のことを認識していなかったことに反省させられる思いでした。

また、性の介助者という立場があることも初めて知りました。介助の行為については、理解できる反面、どこか違和感を覚えました。障害者だけが介助の利用を許されて健常者には許されないとすれば、そこまではっきり区別することが果たして適切なのか、といった疑問も残りました。本書は、性の介助という部分に重点が置かれた内容でしたが、障害者の恋愛に関する部分をもっと深く書かれるとさらによかったかと思います。また、本書がきっかけで風俗産業のあり方などが広く議論されることを期待したいと思います。
◆こんな人におすすめ … 性について改めて深く考えてみたい人。
◆効用 … 人それぞれの性との関わり方があることが分かる。
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「iモード事件」(松永真理)レビュー
iモード事件

iモード事件

(松永真理) 角川書店 ¥480

★★★☆☆ 

著者にしか書けない内容の本である、という意味で価値があると思います。iモード誕生に至るまでの物語は、一気に読ませるだけのドラマチックな面白さがあります。ただし、ビジネス書としての示唆にとんだ記述はあまりありませんでした。エッセイの部類に入るでしょう。

また、私自身が情報通信関連の技術者なので、その立場から言わせてもらうと、どうしても技術軽視な内容に思えてしまいます。技術よりも発想が大事だというようなニュアンスがどうしても気に入りませんでした。ただ、社員が端末のデバッグをしている様子や、"384"を“ザンパースー”と言うことに触れているあたりには、思わずニヤリとしてしまいました。
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「電車男」(中野独人)レビュー
電車男

電車男

(中野独人) 新潮社 ¥1,365

★★★★☆ 

まず企画として、新規性があって面白いです。2ちゃんねるであのような書き込みが実際にあったこと、またそれをそのまま出版するというようなことは、今までに無かったことなので…。出版社の手抜きだとか、本当はフィクションでは?とか意見もあるようですが、大目に見てもいいでしょう。アキバ系のオタクな人々にスポットライトを当て、また2ちゃんねるの多様性を示した点などは、大きな功績と言えるでしょう。

肝心の内容は…、ストーリー自体は特筆すべき点はありませんが、ネットの書き込みを集めただけだから仕方ないですね。でも、電車男の心情やエルメスとのやりとりの様子は、リアルに想像できて面白かったです。映画化のオファーもあるようですが、あの書き込みをどう映像化するのか興味ありますね。
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