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「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」(リリー・フランキー)レビュー
評価:
リリー・フランキー
扶桑社
¥ 1,300
(2005-06-28)
「泣ける本」として各所で評判になっており、私の知人も「これは泣ける。1人で部屋で読まないと」と言っていました。だから私も、泣けるのを楽しみに読んだのですが・・・。どこが泣けるポイントなのか最後までよく分かりませんでした。オカンが亡くなるところで泣けるのかなーと思ったけど、泣けませんでした。確かに、読んでいて一番辛い部分ではあったけれど…。そして、その次に、例えば、オカンの死後、オカンが残したものを見て、何か衝撃的な事実が発覚したりして泣けるのかなーと期待したけど、それもなかった。本書より泣ける本は他にもあると思ったし、きっと、著者にとっても、読者を泣かせるつもりで書いた小説ではないと思います。

私が本書で最も価値があると思ったことは、通常なら恥ずかしくて表に出しにくい話を、堂々と具体的に分かりやすく示していることです。学生時代の無気力な生活や、貧しく困窮した生活、近親者の病床での姿など、あそこまではなかなか書けないと思います。オカンへの強い思い入れ、誇りに思う気持ちがあるからこそ、そこまで書けるのだろうと思いました。本書を読むと、親孝行をどうするべきか、親が最期を迎えるときどうするべきか、など考えさせられます。

本書の中で一箇所、読んでいて、はっとした一節があります。
『・・・・・
自分だけのことで夢中になっていると、駆け抜けていようと転がり続けていようと、その時間は止まっているように感じる。自分しか見えず、自分の体内時計だけを見ていれば、世界の時間は動いていないのと同じだ。
しかし、ふと足を止めて周囲を見渡す余裕が一瞬でも持てた時、甚だ時間が経過していたことに気がつく。
自分ではなく、対象となるものに目を向けた時、どれだけ時間が止まっているように過ごした時でさえ、確実に日めくりはめくれていたのだということに気付く。
そして、その時にはなにかが手遅れになっていることに、もうひとつ気付く。
・・・・・』
自分のことばかり考えて周りが見えていない状態が続くと、何か取り返しのつかないことなる、ということは薄々感じていましたが、こう書かれると納得できます。

もう一つ本書で評価したい点は、この手の、昔の回想録のような小説には、恋愛が大きく扱われることが多いのですが、本書は恋愛に関する記述が少ない、というよりほとんど無かったことです。世の中には、もっと大事なことがたくさんある、ということをよく知らせてくれていると思います。
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「シャドウ」(道尾秀介)レビュー
評価:
道尾 秀介
東京創元社
¥ 1,575
(2006-09-30)
ミステリーとしての着想、ストーリーの骨子はいいと思います。テンポも良くて、半日で一気に読めてしまいました。ただ、どこか物足りなさが残ったまま、あまりにもあっさりと終わってしまったという感覚です。もっと、ディテールや人物の背景・心理描写にこだわって書いてほしかったと思います。精神疾患や幼児期の悲惨な体験を扱った小説という点では「永遠の仔」(天童荒太)に通じるものがあったかと思いますが、同書と比べると、人命や人間の心情の扱いが軽すぎて、登場人物への感情移入もできませんでした。

終盤で大きめのどんでん返しが2回ほどあって、それ自体は面白くてよかったのですが、伏線の張り方が少し弱かったせいか、「あぁ、なんだ、そういうつもりだったのか…」という程度の衝撃しか受けませんでした。もっと回り道をして、複雑で手間をかけた伏線の張り方をしてほしかったと思いました。特に、精神病に関することは、もっと取材をして、専門的な記述を多くしたらよかったのに…と、もったいなく思いました。
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「生首に聞いてみろ」(法月綸太郎)レビュー
生首に聞いてみろ

生首に聞いてみろ

(法月綸太郎)角川書店 ¥1,890

★★★★☆ 

難しいパズルを組み上げた時のような読後感です。前半に出てきたいくつかの伏線が、複雑に絡み合いながら、終盤で次々に解き明かされていきます。その構成の巧みさは見事の一言に尽きます。頭を使いながら読まないといけません。頭の体操になりました。

前半は、一般人になじみの薄い彫刻家や写真家の業界の話が多く、話の流れも単調だったため、読みにくい印象がありましたが、後半からはのめり込むように一気に読めました。ただ、純粋に小説としてみると、もう少し、人物(特に被害者)の心理描写や、行動の動機などにスポットを当てたほうがさらに面白く読めるのでは…と思いました。
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「葉桜の季節に君を想うということ」(歌野晶午)レビュー
葉桜の季節に

葉桜の季節に君を想うということ

(歌野晶午) 文芸春秋 ¥1,950

★★★☆☆

「このミステリーがすごい!2004年版」で1位になったという理由だけで読んでみました。事前に「トリックに騙された…」という感想をいくつか見ていたので、注意して読んでいたのですが、やはり騙されました。同種のトリックの経験者でない限り見抜くのは無理でしょう。どの時点から騙されてたのかと思い、最初から読み返してみたのですが、本当に序盤から騙されてましたね。

ただ、トリックは面白かったのですが、全体として、感動・興奮・余韻のようなものはほとんど残らず、ただ「騙された」という印象があるだけで、やや物足りませんでした。「このミス」で上位にランクされた作品は最近ドラマ化・映画化されることが多いですが、この作品は映像化不可能ですね。本読みだけが楽しめる作品です。
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