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書評掲載予告
近日中に下記の書籍の書評を掲載予定です.(既に読了,または読んでいる途中,または今後読む予定のものです) ※随時更新予定


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「フラット化する世界」(トーマス・フリードマン)レビュー
評価:
トーマス フリードマン
日本経済新聞出版社
¥ 2,100
(2008-01-19)
本書のように、一つの新しいテーマ・視点(本書では「世界のフラット化」)について、膨大な時間と手間をかけて調査・取材し、多大な事例を交えて説明してくれる本は、なかなかありません。その点だけをもってしても、本書は読む価値が十分にあります。

読みながら思ったのは、日本のマスコミは日本と外国の関係を伝えることはあっても、外国と外国の間にビジネスの話はほとんど伝えていない、ということです。本書を読めば、諸外国の間でのビジネスのあり方の変化の実態が分かります。例えば、アウトソーシングにおいて国境の概念はもはや意味を持たず、インドや中国に、知的生産性の高い仕事も含めて多様な形でアウトソーシングが行われていることなどが分かります。

最も参考になったのは、上巻の最後のところで、「無敵の民」として新ミドルクラスに求められる資質が列挙してある部分です(下記読書メモ参照)。グローバル化・フラット化が進む世界で生き延びるにはどうすればいいか、ヒントが明確に示されており、大変参考になりました。一言で言えば、知識よりも知恵・ノウハウを持ち、他人に代替できない付加価値をつけられる人間、ということでしょか。

読後の印象としては、とにかくたくさん読んだなー、という感覚が強く、満足感はあるのですが、全体の構成が頭の中で再整理しにくいです。おそらく、本書の構成が、増補・改訂を重ねているためかもしれませんが、各章で話があちこちに発散しすぎて、結局何が言いたかったのだろう?と思ってしまう箇所も多かったです。

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■読書メモ(本書で印象に残ったこと):

◆メモ・上巻:

・"グローバリゼーション1.0"(1800年頃まで)の原動力は国、"2.0"(2000年まで)の原動力は企業のグローバル化、"3.0"(2000年〜)は、個人の競争、個人の共同作業。情報通信の技術革新が可能にした。
・コールセンター、会計作業など多くの仕事がインドにアウトソーシングされている。

○世界をフラット化した要因:
・ベルリンの壁崩壊で、ソ連・東欧・中国等の抑えられたエネルギーが解放された。
・光ファイバ・インターネット・ソフトウェアの進展により、国境を越えて知的な共同作業が可能となった。
・アップローディング(オープンソースによる開発、金鉱探索、ブログ、wiki等の例)の普及。参加の構造、フィードバックを得ること。
・Y2Kの対応作業委託を機に、インドのIT企業への信頼が高まった。
・中国は、WTO加盟により、内外に変革姿勢を示し、オフショアリングを加速させた。
・ウォルマートは超効率的なサプライチェーンを開発した。最近はRFIDを導入。
・UPSはインソーシングを実施。PCの修理など代行。
・グーグル、ワイヤレスアクセス等の技術革新。

○三重の集束:
・フラット化の要因より、グローバルな共同作業のプラットホームができた。
・指揮・統制が、垂直から水平に変わり、多くの人が共同作業するプロセスが生まれた。
・新たに30億人が、フラット化された「競技場」になだれ込んだ。

○大規模な整理:
・役所で、アウトソーシングを抑制し、税金を高くしてでも、地元の仕事を確保すべきという意見もあり、整理が必要。
・多国籍企業では、企業の「母国」の考え方が無意味になっている。
・フラット化により、上司も些細なこともできるため、共同作業が増す。
・ウォルマートは従業員の待遇が悪いため、医療保険等の面で、納税者の負担増になるが、安価な商品が買える。コストコは逆。どちらがいいか?
・知的財産の整理が必要。共同作業が増すため。また、メール、ネットサービス等のアカウントの本人死後の扱いなども。

○アメリカと自由貿易:
・世界がフラット化しても、壁を設けようとせず、自由貿易の一般原則を貫くほうが、アメリカの国全体として利益が得られる。
・知識基盤型の商品は、市場が広ければ広いほど売れる。肉体労働は、売り手が多く買い手が少ない場合もある。アメリカは、知識労働者を増やすことができれば、フラット化で栄える。

○無敵の民:
代替可能(デジタル化、アウトソーシング、オートメーション化できる)でない仕事ができることが新ミドルクラスに求められる:
・共同作業のまとめ役。
・異なる技術要素・ビジネス等を統合する合成役。
・複雑なものを分かりやすく説明する説明役。
・新技術を梃子に使い、業務改善をする梃入れ役。
・学び、成長する多芸多能なバーサタイリスト(何でも屋)である適応者。
・エネルギー・環境問題を扱うグリーンピープル。
・人間による属人的なサービスをするパーソナライザー。
・金融・検索等多様な分野で増大する数学の効能に応えられる数学好き。
・グローバルな競争力を現地のニーズに適合させるローカライザー。

◆メモ・下巻

○教育:
・IQより、CQ(好奇心)+PQ(熱意)が重要。
・幅広い教養、右脳の使用、音楽も有効。
・米国では科学者・エンジニアが不足している。科学技術を専攻する学生も減っている。成功願望が低く、努力を怠っている。優秀な科学者・技術者を育てるには15年かかるが、予算をかけていない。アメリカの産業は危機的状況を迎える。
・政府・企業は、労働者のエンプロイアビリティ向上に注力すべき。その上で、社会保険・医療保険制度を整備し、フラット化に対応すること。

○発展途上国:
・起業、雇用・解雇、契約執行、融資、破産・廃業、の5つが摩擦なしに単純な手続きで可能な国は繁栄できる。
・アイルランドは、ガバナンス、インフラ、教育の改革が進み、発展した。米国企業も多く進出している。

○企業:
・消費者が大物のように振舞える環境は有効(カスタマイズで可能となった)。
・専門分野は細分化している。価値のある仕事は企業の独力では無理で、共同作業が不可欠。

○個人:
・情報のアップロードにより「ローカルのグローバル化」が進んでいる。
・グラミン銀行のマイクロ金融は、無担保で回収率98%。貧困層は信用の高い融資先になりうる。
・フラット化のマイナス面:多くの人と接続できるようになったが、人との関係が希薄になった。個人のことがブログに書かれ訴訟に至ることも。履歴書は意味がなくなる。検索で個人のことが分かる。早めにしっかりしたキャラクターを確立しないといけない。

○地政学:
・フラット化した世界に住む人とそうでない人の境目は、希望を持っているかどうか。希望が持てない理由は、病気か政府の機能不全。
・マラリアは地球での最大の死因の一つだが、フラット化していない世界だけで年に100万人がマラリアで死ぬ。
・世界がフラット化したため、パンデミックへの対処能力は低下している。
・HPの事例:インド農村で、文字の読み書きができない村民の自尊心を刺激し、需要を掘り起こし、移動写真スタジオのビジネスを起こした。
・フラット化の源は「信頼」。テロリストは、それを攻撃し、フラット化を阻止しようとする。
・北京では一日1000台新車が増えている(2004年)。中国は世界2位の石油輸入国になった(2003年)。中国では今後農村から都市部への人口の移動も増え、エネルギー不足も深刻化する。
・マラッカ海峡に、中国は注意している。米軍が封鎖すれば経済的打撃に。
・グローバルなサプライチェーンが紛争抑止になる。インド・パキスタン危機回避の例など。
・インターネットは、合理性より不合理性を多く伝える。不合理性は感情的で、知識を必要としないから。テロにも使われる。
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|経済・産業・金融 | comments(1) | trackbacks(0) |
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「100歳まで元気に生きる!」(ジョン・ロビンズ)レビュー
評価:
ジョン・ロビンズ
アスペクト
¥ 2,100
(2006-09-19)
タイトルだけ見ると、単に長生きするためのノウハウを集めたお手軽な実用書かと思われてしまいそうだが、全く違う。むしろ学術書に分類されるような内容です。長寿だけでなく「健康的に」長く生き続けるための方法を、多くの事例や文献を参照しながら、多角的に説明しています。

類書として、「病気にならない生き方」が有名ですが、これは、医師が自らの経験に基づく考えを述べており、非常に参考にはなるものの、客観性に疑問が残る部分もありました。一方、本書は、多数の文献・実験データを参照し、引用元も明記してあるため、記述に客観性があり、十分信頼できるように思えました。これら2冊を含めて、類書をいくつか読んだ上で、共通する事項(例えば動物性の食品を控えるなど)を実践しておけば間違いないかと思われます。

本書では、長寿の地域の事例として、アブハズ、ヴィルカバンバ、フンザ、沖縄を取り上げています。これらの事例を読むと、今の日本人の多くがいかに不健康な生活環境に置かれているかを思い知らされます。ただ、これらの地域について、長寿の側面だけを全面的に賞賛するだけでなく、衛生面で問題がある場合がある、近年は欧米文化の影響を受けて病気が増えている、などの否定的な面にも触れています。これらの地域をそのまま真似すればいいというわけではない、と冷静な議論をしている点からも、本書のバランス感覚の良さがうかがえます。

大別すると、食生活、運動、精神面の3点が重要であると説いています。特に食生活に関する説明は、情報量が多く、非常に参考になります。運動の必要性についても、十分納得できる説明があります。ただ、精神面が長寿・健康に与える影響については、因果関係はあるのだろうし、ある程度証拠も出てきているが、まだ研究が十分に進んでいないようにも思われました。

本書を読んで、歳をとることに対するネガティブなイメージが軽減されました。むしろ、老後が楽しみにすら思えてくるほどです。定年退職後は趣味を楽しんで、100歳まで元気に生きて、病気にはならず、眠るようにコロっと死ぬ、という理想的な老後を送りたいものです。その希望を与えてくれます。生活習慣病やメタボリックシンドロームの心配をするよりも、もっと高い次元で、長期的観点から、自らの健康を考えるきっかけを与えてくれます。高齢の人よりも、むしろ、若い人に読まれるべき本だと思います。
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■読書メモ(本書で印象に残ったこと):

○ 長寿の地域:
・アブハズ:長寿であるだけでなく、心身ともに健康なまま長生きする人が多い。長寿者は、日々の生活で多く運動する。
・ヴィルカバンバ:アブハズと同様、老人が敬われる。また、よく笑う。
・フンザ:完全な有機農法を何世紀も続けてきた。フンザでは、死に先立つ病気・苦しみはない。
(3地域の食事は共通している。新鮮な野菜、果物、全粒穀物、木の実が中心。調理はあまりせず、生のまま食べることが多い。動物性のものはほとんど食べず、低カロリー。)
・沖縄の老人は、前立腺がん、乳がん、骨粗鬆症などが少ない。ただし、若い世代は、食生活の欧米化により、健康を害している。

・実験から、低カロリー・高栄養価の食事を続けると、年齢を若返らせることができた。(6年続けたが、15年若かった。)

○食事:
・全粒小麦を精白すると、ビタミン・ミネラル等の大部分が取り除かれる。
・アボリジニの先住民は、近年、加工食品を食べるようになって、白人の病気をするようになった。
・中国で、世界最大規模の食生活調査があった。地域により癌罹患率の差がある。植物性食品をとり、動物性食品を避け、血中コレステロール値を下げることで癌罹患率が下がることが明確になった。
・オメガ3脂肪酸は、多様な身体・精神面での恩恵をもたらす。特にDHA,EPAの摂取には、魚、特に天然の(養殖ではない)サケが有効。(動物性の食べ物は、魚だけで十分?)
・米国の養殖魚には、エサや環境に問題があり、毒性物質が多く含まれる。また、魚を多く食べると血中水銀濃度が上がるため、食べ過ぎないこと(米国の場合?)。
・肉から鉄分(ヘム鉄)をとると、過剰分が活性酸素になり、早期老化を招く。植物から得られる非ヘム鉄は、必要分のみ吸収され、健康と長寿に繋がる。

○運動:
・運動は高齢者でも必要。有酸素運動、ストレッチング、筋力トレーニングを行うこと。
・実験の結果、カルシウム摂取より、運動をするほうが、骨密度が高くなる。
・脂肪に対する筋肉の割合を高くすること。
・いくら運動しても食生活が悪ければダメ(運動中の突然死は、食生活が原因?)。
・脳の能力維持、アルツハイマー病予防には、運動と、抗酸化物質を多く含む食品(新鮮な野菜、果物、全粒穀物、豆類)、魚が有効。肉は最小限に。
・人間関係、愛情が長寿・健康に結びつく実験データもある。社会との関わりを持つことが重要。ストレス、有害な人間関係は逆効果。
・日本が世界一の長寿国なのは、平等な協調社会が要因。

○例外:
どんなに健康的な食生活、運動をしても、思わぬ要因で早く死ぬこともある。ただ、できるだけ病気を予防し、苦痛を弱める努力をする価値はある。
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|医療・健康・食品 | comments(1) | trackbacks(1) |
「生物と無生物のあいだ」(福岡伸一)レビュー
私も普段から、生命とは何か、ということはよく考えていたのでした。考えれば考えるほど奥が深い問題です。仮に、地球以外の天体にも生命体らしきものが存在する場合、それは地球と同様に、タンパク質で構成され、DNAを持つのか、あるいは全く別の分子構造で自己複製を実現するのか、とか・・・。昔はそんなことを考えることもなかったのですが。学生の頃も、物理・化学の授業しかとってませんでしたが、今では生物学のほうが興味があります。

本書は、生命とは何かについてより深く考えるきっかけを与えてくれましたが、やはり結論は出ません。本書の言うように、自己複製ではなく、動的平衡こそがその答えだというのは、分かる気がするのですが、その動的平衡を可能にさせる要因・機能は何か、ということが本書でも具体的に説明されていません。そのあたりを詳しく書いた書籍があれば読みたいです。

本書で最も印象的だったのは、動的平衡である生物には、不可逆な時間の流れがあり、一度折りたたんだら二度と解くことはできない、そこが、部品交換できる機械とは違う点だ、という説明です。生命の営みに操作的な介入をすることの危険性も感覚的に分かりました。遺伝子組み換え食品の安全性の議論も、時間の経過とともに、動的平衡にどのような影響が出るかが論点なのでしょうね。

全体として、科学者が書く文章とは思えないほど、読みやすさと面白さが両立されています。科学技術系の仕事の話を、ある程度専門的に細かく、ドラマチックに描くことができる人は稀有な存在だと思います。また、大学での生物学系の研究者の考え方、研究室の様子が臨場感をもって書かれていて、私のいた工学系との違いも分かって面白かったです。
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■読書メモ(本書で印象に残ったこと):

・ロックフェラー大学での野口英世の評判は悪い。野口の研究業績が死後50年経って検証されたが、意味のあるものはなかった。当時それに気づく人がいなかった。

・ウィルスは、一切の代謝を行わず、結晶化することもあり、物質的である。しかし自己複製能力を持つ。自己複製するものが生物、と定義するなら、ウィルスは生物と言えるが、生物か無生物かの結論は出ていない。著者は、生物ではないと考える。

・DNAの二重らせん構造を発見したのは、ワトソンとクリックだが、そのヒント、つまりDNAイコール遺伝子だと世界で初めて気づいたのはオズワルド・エイブリーである。彼にノーベル賞が与えられなかったのは不当だと言われている。また、ワトソンとクリックは、不正に得た情報(ロザリンド・フランクリンの功績によるDNAのX線写真の覗き見)から発見に至った。

・米国の大学は、日本の大学のような教授・准教授等の職階間の支配関係はなく、独立した研究者であり、大学と研究者の関係は、貸しビルとテナントのようである。研究費は自ら稼ぎ、額に応じて研究スペースが割り当てられる。人の入れ替わりも激しい。

・シュレーディンガーの説:われわれの身体は、原子に対して何故これほど大きいのか。原子はランダムな熱運動をするが、原子が多数あれば、その平均的な動きに一定の傾向、つまり生命体の持つ秩序が生まれる。n個の粒子があれば、そのうちルートn個が平均的ふるまいから外れた動きをする。誤差率は {√n}/n であり、nが大きくなるほど、誤差率は小さくなる。人間の生命現象に求められる低い誤差率を実現するため、人間の原子数はこれほど多く、身体はこれほど大きい。

・エントロピーは増大する方向に向かう。それは死を意味する。食べることで、生命はエントロピーを下げることができる。

・シェーンハイマーの重窒素を用いた実験により、生命体とは、ダイナミックな流れ=動的平衡であることが分かった。

・細胞生物学とは「トポロジー」の科学であり、建築家に似ている。

・ある遺伝子をノックアウトしても、動的平衡がピースの欠落を補完し、分化・再生により最後まで「折りたたまれる」。不完全なピース(例えばプリオンタンパク質)を与えると、時間の経過により、折りたたみに失敗し、異常が発生する。生物には、不可逆の時間の流れがある。
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|科学技術 | comments(6) | trackbacks(0) |
「調理場という戦場」(斉須政雄) レビュー
東京三田にあるフランス料理のレストラン「コート・ドール」のシェフが、料理人としての苦労話や自らの考えを記したものです。本書を読むきっかけは、以前、宮大工の西岡常一氏の「木に学べ―法隆寺・薬師寺の美」を読んだときに、職人のプロ意識の奥の深さに感銘を受け、他の分野の職人の考えにも触れてみたいと思ったからでした。私は、自分では全く料理をしません。だからこそ、料理を極めた人の著作からは何か新たな知見が得られるのでは、と考えたのでした。

以下、本書で印象に残っていること:
・料理人の世界の厳しさがよく描かれていた。単身でフランスに渡って修行を積んでいた頃の生活環境の厳しさ、戦場と例えられる仕事量の多さと精神的なプレッシャーなど。
・店を変えながら経験を積み、実力と信頼を向上させていく過程は、一般のビジネスマン(人事異動・転職など)にも通じるものがあると思いました。
・3店目の「ヴィヴァロワ」で、オーナーに心酔し「こういう人になりたい」と思った場面が印象的。オーナーの、無欲で自然体で、掃除を徹底して行なうところがいかに素晴らしいか。
・4店目の「タイユバン」は、同じパリのミシュランの三つ星レストランでも、ヴィヴァロワとは全く対照的なのが面白い。ヴィヴァロワは自由度が高く一人で多くの作業ができたが、タイユバンでは、作業が細分化・分業が厳格に守られ、一人の人に全てを分からせない、情報を盗まれない仕組みになっていることに驚いた。
・著者が同僚に腹をたてて手を出してしまう(しかもほとんど反省も後悔もしていない)シーンがいくつか出てきたのにはびっくり。
・「一般的な料理のマニュアルに従った作り方から言えば、ちょっと足りないことやちょっと出すぎたようなことを、時と場合によって、素材の様子によって使い分ける。そういった微調整ができることが、料理人の能力の重要な部分だとぼくは思う。」・・・どの世界にも当てはまりそうですね。
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|ノンフィクション一般 | comments(0) | trackbacks(0) |
「ブルー・オーシャン戦略」(W・チャン・キム, レネ・モボルニュ)レビュー
評価:
W・チャン・キム,レネ・モボルニュ
ランダムハウス講談社
¥ 1,995
(2005-06-21)
ブルー・オーシャン戦略は、私の周囲でも流行り言葉のように使われています。一言で言えば、競争のない市場を開拓し、新たな需要を創造し、従来の競争を無意味にする。その際、技術革新は伴わず、コストを抑えながら、顧客にとっての価値を高める。ということでしょうか。本書は、ブルーオーシャン戦略のバイブルとされており、一読の価値ありです。特に、初めに競争市場ありき、という観点でマーケティングを考えてきた人には、得るものが多いでしょう。多数の事例が紹介されていて分かりやすいです。本書では書かれてませんでしたが、任天堂のDSやWiiもブルーオーシャンと言えるでしょう。

ただ、疑問に思うこともあります。本書では、過去の多くのブルーオーシャン戦略の事例を取り上げていますが、それらは「『ブルーオーシャン戦略』という方法を採用しよう」という計画のもと実行され、成功したのではないはずです。単に本書が、過去の成功事例だけを都合よく集めて、それらに共通する部分を帰納的に「ブルーオーシャン戦略」と呼んでいるに過ぎないのではないでしょうか。つまり、ブルーオーシャン戦略の中のどのツール・プロセスを適用すればどれくらいの確率で成功する、といった演繹的な意味での保証はできないのではと思うのです。この点について、本書では明確は説明がありません。他の文献に何か書いてあるのでしょうか。識者にご教示いただきたいです。
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【以下、読書メモ/要約】
○ツール:
・戦略キャンバス(価値曲線)
・新しい価値曲線を描くために、要素を「付け加える」「増やす」「取り除く」「減らす」ことを検討する。(4つのアクション→アクションマトリクス)
・価値曲線には、(1)メリハリ、(2)高い独自性、(3)訴求力のあるキャッチフレーズ、の3つが必要。
例:シルク・ドゥ・ソレイユ、イエロー・テイル(ワイン)

○ブルーオーシャンを創造する6つのパス:
1) 代替産業に学ぶ(機能・形状が異なるが同じ目的のもの。例:ネットジェッツ、NTTドコモ・iモード。)
2) 業界内の他の戦略グループから学ぶ。(顧客が別のグループを選ぶ際の決め手は? 例:フィットネスクラブのカーブス)
3) 買い手グループに目を向ける。(購買者と、利用者・意思決定者は別かも。例:ノボ社のインスリン)
4) 補完財や補完サービスを見渡す。(使用中・前後のネック解消を。例:映画館のベビーシッター。ハンガリーのバスNABI社)
5) 機能志向と感性志向を切り替える。(感性志向の事業は簡略化、機能志向はその逆を。例:QBハウス)
6) 将来を見渡す。(後戻りしないトレンドを予測。例:アップル iPod/iTunes、CNNニュース、シスコのルータ)

○戦略キャンバスを描くプロセス:
1. 現在の戦略キャンバスを図示、他社と比較。
2. 現場を見て、現状を把握。
3. 価値曲線を描く。既存顧客・他社顧客・潜在顧客に説明し、フィードバックを得る。
4. PMSマップでビジュアル化(パイオニア/移行者/安住者、の現状と今後)。

○新たな需要を掘り起こす(非顧客層に目を向ける)。
1) より良い選択肢を求める層:他業界に去った顧客の共通点は?
2) 敢えて利用しない層:利用しない理由は?
3) 未開拓層

○戦略を考える正しい順序:
1. 買い手にとっての効用 → 2. 価格 → 3. コスト → 4. 実現への手立て。
・効用を生み出すには:
顧客経験の6ステージ(購入、納品、使用、併用、保守管理、廃棄)において、顧客の生産性、シンプルさ、利便性、リスク、楽しさや好ましいイメージ、環境への優しさ、の観点で新たな効用を検討する。
・価格:
step1. 顧客の密集する価格帯を見極める(同形態、異形態同機能、異機能同目的、の製品・サービスの価格を調査)
step2. 顧客の密集する価格帯の範囲内で価格を決める。(法規制・特許があれば高め、模倣しやすい場合低めに)
・コスト:価格を実現するため、合理化、コスト革新、提携などの手段をとる。
・導入:導入の障壁に対応(従業員、事業パートナー、消費者の抵抗を無くす)。

○その他
・組織面のハードル:影響力の大きい要因に集中する(ティッピングポイント・リーダーシップ)。例:ニューヨーク市警ブラットン本部長。
・社内の協力を得るには、公正なプロセスによる戦略策定が必要(3E:関与、説明、明快な期待内容)
・ブルーオーシャンは模倣が難しい。(従来の理論に染まった人には理解されない。ブランドイメージを損なう。共倒れになる。特許・法規制。社内の文化。顧客の支持。などの問題)
・ブルーオーシャンは、既存企業・新興企業の両方で可能。既存企業の場合、中核事業であることが多い。
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「十角館の殺人」(綾辻行人)レビュー
大学のミステリ研究会の学生が大勢出てきて、互いに妙なニックネームで呼び合いながら、子供じみた会話をしているという状況が多かったため、中盤あたりまではあまり面白いと思いませんでした。というか、島にいるメンバーの中で誰が一番怪しいか、という点については、途中からほぼ読めていました。あとはもう、終盤に驚きのどんでん返しがあるということだけが楽しみでした。そして、あの衝撃の一行が待っていました。全く予期せぬタイミングだったため、意表をつかれました。鮮やかでした。

しかし、この小説は、つまるところ、あの一行で読者を驚かせるためだけに、全ての人物が配置され、全てのストーリーが準備され、そしてあの一行の後は単なる後始末の説明をしただけなのでは、とも思いました。あれだけの長さの小説なのだから、さらに一波乱あったらよかったのに・・・。
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|綾辻行人 | comments(0) | trackbacks(0) |
「あかんべえ」(宮部みゆき)レビュー
宮部みゆきの本は何冊か読んでいますが、時代小説はまだ読んでいませんでした。一冊くらい読んでみようと思って、評判のいい本書を選んで読んでみたのですが、どうも私の趣味に合わないようでした。幽霊がたくさん出てくるファンタジーもので、現実には起こりえない話でした。もっとも、ファンタジー自体が嫌いなわけではありません。「蒲生邸事件」は、タイムスリップを題材にしたファンタジーですが、宮部みゆきの作品の中では一番気に入っています。しかし、本書は「蒲生邸事件」のように好きになれませんでした。

楽しめなかった要因としては、第一に、ストーリーや、各登場人物の行動・発言に、納得できないものが多かったことです。例えば、なぜ、主人公のおりんには全ての幽霊が見えて、他の人には、全く見えなかったり、一部しか見えなかったりするのか。これが本書の最大のミステリーだと思って、あっと驚く種明かしがあるかと期待していたのですが、期待はずれでした。また、お化けさん達が成仏できる場合とできない場合の違いにも、重大な謎が隠されているのかと思って読んでいたのですが、最後まですっきりしませんでした。

ではミステリー的な部分以外で楽しめるところが多かったかというと、そうでもなくて、特にストーリーの前半から中盤にかけては、変化に乏しく、かなり退屈でした。終盤に急展開するところはまあまあ面白くて、のめりこんで読むことができたのですが、最後の終わり方がすっきりしませんでした。
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|宮部みゆき | comments(1) | trackbacks(0) |